伝説の勇者の伝説 第16話「微笑まない女神」
ついに、シオンへの信頼にも揺らぎが・・・?
・どこまでも歪んだ世界
何を今さら、と思われるかもしれないが、しかし今回は、改めてこの作品の主人公がライナ・リュートその人であるということを、痛感したエピソードだった。
今回描かれたフェリスの過去。どこまでも使命を優先し、そのために人間性を歪めてしまったエリス家の因習に虐げられそうになった彼女だが、そのフェリスを救ってくれたのは、さらに人間性を歪めてしまった肉親・ルシルだった。この二重に忌まわしい記憶を、呪いのようにその心に刻み込んでいるフェリスは、しかし今は人間らしい快活さを手にして日々を過ごしている。今回、彼女の過去に捉われ心を痛めたのは、フェリス自身ではなく、友人のライナであった。
「伝勇伝」の世界は、極めて恣意的に、間違った方向へ歪められている。我々が生きるリアルな世界にも備わっている人間存在のいびつさや気持ちの悪さを、創作された世界の中でより分かりやすく表象していると言えよう。そしてその世界の歪みを照らし出すのが、主人公であるライナ・リュートの役割である。
今回の30分間だけで、ライナはいくつもの世界の”歪み”を照らし出した。王を守護するエリス家にまつわる歪み。その中で虐げられた少女の生き様の歪み。歪んだ因習を正すためにさらに歪んでしまった一人の男。フェリスの過去の回想シーンはライナ視点では無いけれど、それを想像と推測でほぼ正しく把握してしまった点は、作劇上の要請も無論あるだろうが、それ以上にライナという人物が、この世界の歪みを敏感に察知し暴きだすひとつの象徴的な場面であった。そしてそれを踏まえた上で描かれる、ルシルによって改めて指摘されたバケモノとしての自分自身の存在のいびつさと、ルークの陰謀によって明らかにされた、友人をも手にかけようとする王の残酷な指令書。何もかもが根底から間違っていて、なおかつその歪んだ現実がこの世界システムを円満に稼働させているという究極の理不尽。かつて神を呪ったライナの言葉が、改めてずっしりと響いてくる、そんなエピソードだった。
・急展開の物語はどこへ向かう?
さて、前々回がラブコメとBL臭の漂うギャグ回、前回がイリスとシオンによる総集編ということで、しばらく動きを止めていた物語が、今回はいよいよ動き出した。それも、同時に複数の視点で急展開を迎える慌ただしい再スタートだ。
大きな視点から言えば、まずキファのいる地点が「旧ストオル皇国」と表記されていたのには驚かされた。第13話においてストオルの大軍勢を撃破したガスタークが、とうとうストオルの全土を飲み込んでしまったらしい(公式サイトのマップを参照したら、やはりストオルが無くなっていた)。急速に拡大した支配地をまとめるのは大変だろうから今は戦後処理で忙しいのかもしれないが、このガスタークがいよいよ中央大陸へ乗り出してくる様子が、近々描かれるかもしれない。
またそれと同じことはエスタブールを取り込んだローランドについても言えて、今回シオンがエスタブール行きを計画していたのは、とくにエスタブール軍の編入に関する問題を清算しようという動きだったのではないかと推測できる。この両国の大きな動きが、後半戦の鍵となってくるのだろう。
一方、それぞれのキャラに即した視点では、やはりもっとも気になるのがミランの動き。彼はライナを片付けようと画策しているハズだが、外堀から埋めようとミルク隊長に手を出してきたのは、その直前のミルクの表情が幸せいっぱいで微笑ましいものであっただけに、はらわたの煮えくりかえる思いがする。ただ、ライナを殺すための材料なので、いきなり暗殺ではなく生かしたまま誘拐する可能性の方が高そうなのは、まだ救いか。
本当ならライナにはここで颯爽と救援に駆けつけて欲しかったところだが、残念、宿に帰ってしまっていたなぁ。彼は彼で、シオンの署名が記されている残酷な指令書を目にしてショックを隠せない様子だが、愕然として慌てふためくのではなく、もう何もかも諦めきったような放心状態というのが、彼の半生の苛酷さを思わせて泣きそうになる。せめて取り乱してくれたほうが、画面やセリフから伝わって来るつらさも、和らいだであろうに・・・。
ここに来て、ライナ一人の肩の上に、同時に解決するなど到底不可能そうな案件がふたつもみっつも積み上げられ、主人公としての彼の選択が物語の展開に極めて大きな影響をもたらす、ほぼ初めての事例になってきそうだ。とくに、今までの彼だったら問答無用でミルク救出に赴いたことであろうのに、ルシルの発言を真に受けて自己卑下のループの中に足を突っ込んでしまっていそうなのが、見ていて大きな不安に駆られる要素だ。
命令されたからとか、誰かを援けるためだとか、そんな大義名分ではなくあくまで自分自身の問題として、彼が決断を迫られる場面が、描かれることになるかもしれない。よく注目しておこう。
----
それでは、今回は以上です。

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・どこまでも歪んだ世界
何を今さら、と思われるかもしれないが、しかし今回は、改めてこの作品の主人公がライナ・リュートその人であるということを、痛感したエピソードだった。
今回描かれたフェリスの過去。どこまでも使命を優先し、そのために人間性を歪めてしまったエリス家の因習に虐げられそうになった彼女だが、そのフェリスを救ってくれたのは、さらに人間性を歪めてしまった肉親・ルシルだった。この二重に忌まわしい記憶を、呪いのようにその心に刻み込んでいるフェリスは、しかし今は人間らしい快活さを手にして日々を過ごしている。今回、彼女の過去に捉われ心を痛めたのは、フェリス自身ではなく、友人のライナであった。
「伝勇伝」の世界は、極めて恣意的に、間違った方向へ歪められている。我々が生きるリアルな世界にも備わっている人間存在のいびつさや気持ちの悪さを、創作された世界の中でより分かりやすく表象していると言えよう。そしてその世界の歪みを照らし出すのが、主人公であるライナ・リュートの役割である。
今回の30分間だけで、ライナはいくつもの世界の”歪み”を照らし出した。王を守護するエリス家にまつわる歪み。その中で虐げられた少女の生き様の歪み。歪んだ因習を正すためにさらに歪んでしまった一人の男。フェリスの過去の回想シーンはライナ視点では無いけれど、それを想像と推測でほぼ正しく把握してしまった点は、作劇上の要請も無論あるだろうが、それ以上にライナという人物が、この世界の歪みを敏感に察知し暴きだすひとつの象徴的な場面であった。そしてそれを踏まえた上で描かれる、ルシルによって改めて指摘されたバケモノとしての自分自身の存在のいびつさと、ルークの陰謀によって明らかにされた、友人をも手にかけようとする王の残酷な指令書。何もかもが根底から間違っていて、なおかつその歪んだ現実がこの世界システムを円満に稼働させているという究極の理不尽。かつて神を呪ったライナの言葉が、改めてずっしりと響いてくる、そんなエピソードだった。
・急展開の物語はどこへ向かう?
さて、前々回がラブコメとBL臭の漂うギャグ回、前回がイリスとシオンによる総集編ということで、しばらく動きを止めていた物語が、今回はいよいよ動き出した。それも、同時に複数の視点で急展開を迎える慌ただしい再スタートだ。
大きな視点から言えば、まずキファのいる地点が「旧ストオル皇国」と表記されていたのには驚かされた。第13話においてストオルの大軍勢を撃破したガスタークが、とうとうストオルの全土を飲み込んでしまったらしい(公式サイトのマップを参照したら、やはりストオルが無くなっていた)。急速に拡大した支配地をまとめるのは大変だろうから今は戦後処理で忙しいのかもしれないが、このガスタークがいよいよ中央大陸へ乗り出してくる様子が、近々描かれるかもしれない。
またそれと同じことはエスタブールを取り込んだローランドについても言えて、今回シオンがエスタブール行きを計画していたのは、とくにエスタブール軍の編入に関する問題を清算しようという動きだったのではないかと推測できる。この両国の大きな動きが、後半戦の鍵となってくるのだろう。
一方、それぞれのキャラに即した視点では、やはりもっとも気になるのがミランの動き。彼はライナを片付けようと画策しているハズだが、外堀から埋めようとミルク隊長に手を出してきたのは、その直前のミルクの表情が幸せいっぱいで微笑ましいものであっただけに、はらわたの煮えくりかえる思いがする。ただ、ライナを殺すための材料なので、いきなり暗殺ではなく生かしたまま誘拐する可能性の方が高そうなのは、まだ救いか。
本当ならライナにはここで颯爽と救援に駆けつけて欲しかったところだが、残念、宿に帰ってしまっていたなぁ。彼は彼で、シオンの署名が記されている残酷な指令書を目にしてショックを隠せない様子だが、愕然として慌てふためくのではなく、もう何もかも諦めきったような放心状態というのが、彼の半生の苛酷さを思わせて泣きそうになる。せめて取り乱してくれたほうが、画面やセリフから伝わって来るつらさも、和らいだであろうに・・・。
ここに来て、ライナ一人の肩の上に、同時に解決するなど到底不可能そうな案件がふたつもみっつも積み上げられ、主人公としての彼の選択が物語の展開に極めて大きな影響をもたらす、ほぼ初めての事例になってきそうだ。とくに、今までの彼だったら問答無用でミルク救出に赴いたことであろうのに、ルシルの発言を真に受けて自己卑下のループの中に足を突っ込んでしまっていそうなのが、見ていて大きな不安に駆られる要素だ。
命令されたからとか、誰かを援けるためだとか、そんな大義名分ではなくあくまで自分自身の問題として、彼が決断を迫られる場面が、描かれることになるかもしれない。よく注目しておこう。
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