STAR DRIVER 輝きのタクト 第12話「ガラス越しのキス」

残念、カンガルーと戦う話じゃなかった。




・ガラス越しのキス、ガラス抜きで


絶対にやると思った、ガラス抜きでのキスw 悲壮感と青春の心地よさとが同居する、きわめて”ワタナベ・カナコらしい”エピソードとなった第12話。最強の敵であると同時に、最良の友人でもあるタクトに対して、カナコはいったいどのような感情をその仮面の下に隠しているのだろう?


以前からカナコは、複雑な内面を抱える今作の登場人物の中でも、ことさらに多面性を強調するキャラクターであった。基本的には「妖艶」の一言でそのキャラクター性の大部分を言い表せてしまいそうだが、その実、学校での人を食ったようなお茶目さ、自宅での家主としての威厳、仕事に対する熱心さと誇り、そして綺羅星十字団の中でもひときわサイバディに執心なのも、彼女の特徴だろう。それでいて前回などは心優しい一面を秘めていたことも明らかとなり、いったい何枚の仮面を付けているのか、その本性はいったいドコにあるのか、まったく読めない人物だ。いや、そうしたいくつもの表情のすべてが、ワタナベ・カナコという人物の真実として、その言動に内包されているのかもしれない。


その中で今回、シモーヌの口によって、カナコが好んでする「ガラス越しのキス」にどのような意味が込められているのか、その一端が明らかになった。本来青春時代の友情とは、剥き出しの心と心で触れあうのが理想である。そうした一般的な青春の謳歌に憧れながら、立場のゆえか、それとも不器用さのゆえか、他の学生達のような振る舞いをすることがどうしても出来ない。そんな憧憬と現実とのギャップを何とかして乗り越えようと腐心した結果が、ガラス越しのキスという、破廉恥で非常識な、しかし極めて象徴的なゲームに集約されていたらしい。


カナコとしての昼の顔と、頭取としての夜の顔の、両方でもってタクトと言葉を交わし拳を交えた今回のエピソード。カナコにとっては、自分の憧れる青春像をもっともよく体現している人物としてタクトを意識し、彼となら、ガラス抜きの友情を構築することができるかもしれないと、そんなことを想ったのかもしれない。




・おとな銀行の目的とは


今回はまたいくつか重要そうな設定が語られることになった。島に眠る古代銀河文明をこれ以上封印しておくことはできないとか、自分が大魔王になるしかないとか、また言葉ばかりが先行する伏線の連鎖に戸惑わされてしまう展開ではあった。


ところで今回とくに注目すべきと思ったのが、おとな銀行の活動の意図だ。カナコの語っていた内容から察するに、いま南十字島で行われているサイバディ同士の戦いと実験が、逐一、世界の有力組織に情報が流れており、それによって経済や政策にまで影響を及ぼしている事実が、あるらしい。綺羅星十字団の活動は、学生達による単なるおままごとでも無ければ、外界のあずかり知らぬところで人類の命運を賭けた陰謀が進行している、というドラマでもなく、極めて密接に世界情勢とリンクしているようだ。


シリーズ序盤、綺羅星十字団の目的が何かという問いに対して、サイバディをゼロ時間外で使えるようにして軍事的・政治的・経済的に世界を変えようとしている、という答えがエンドウ・サリナによって語られた(第2話)。しかしその後の展開を見るに、どうも十字団の連中は、そうした世界のシステムへの直接的な影響力を志向するのとは違う目的で活動しているのではないかと、推測させるような言動も見えた。具体的には「旅立ちの日」とやらが何を指しているのか、金稼ぎや権力の掌握ではなくもっと大それたことをやろうとしているのではないかと、そんな印象が、最近の綺羅星十字団からは感じられる。


その中にあってカナコとおとな銀行の面々は、もともと示されていた十字団の目的にもっとも合致するような動きを見せている。この点には注目しておくべきだろう。現段階で推測できるのは、綺羅星十字団の多くのメンバーは、いま行われている計画が非常に非現実的な理想(例えば、人類補完計画のような?)の実現を目指していると信じている。けれど少なくともおとな銀行だけは、サイバディのちからを現実世界に及ぼすことで利益を得ようとしており、またスポンサー(レオン・ワタナベ?)もそれを望んでいるのだろう。さらに言えば、カナコはそうしたスポンサーの欲望までも利用して、自身の持つ理想、それこそ「全人類に対する重い責任を負う」覚悟を持ち、「本気で世界平和のことなどを考えているらしい」のではないかとさえ考えられる。


綺羅星十字団が一枚岩の組織ではなく、むしろ無数の野望や理想や目的をもった人々の寄せ集めに過ぎないことは、すでに何度も描かれてきたことだ。サイバディの蘇生計画がいよいよ実行に移されようとしている今、十字団の各隊や各メンバーがどのような目的意識で行動しているのか、よりいっそうの注意を持って見守って行く必要があるだろう。




・持ち込まれた歯ブラシにみる虚構性


ところでこの作品は第1話の頃から、大真面目に馬鹿なことをやって我々を楽しませてくれていて、こういう良い意味での、肩の力を抜く遊び心が、他のアニメとは決定的に異なる今作独特の魅力を醸し出している。


今回で言えば、何と言ってもゼロ時間内に歯磨き中のワコが飛び込んできたことだ。その上ずっと歯ブラシを咥えるたままセリフにならないセリフを叫んでいて、この緊迫した状況の中で何をやっているんだとツッコミたくなるw しかも歯ブラシを咥えていることが、ドラマには何の影響力も及ぼさない。ヒロインであるハズのワコは完全にマヌケな役を押しつけられスルーされた格好だったわけで。こういう演出は、好きだなぁ。


どーせタクトが勝つんでしょ、というのが明らかな戦闘パートではある。それも毎回ひねりのない単純な作劇で、最初は敵方のサイバディが優勢だが、気合いを入れ直したタクトがあっさり勝利を収めてしまうというセオリーを頑なに維持している。作画の素晴らしさや戦術の発想の良さはあるけれど、戦闘シーン自体の尺も短く、あくまでキャラクターによるドラマを引きたてるための様式美として、サイバディが扱われていると言える。だからこそ、歯磨き中のワコが登場するなんてフザけたハプニングが行えるのだろう。


戦闘のタイミングを決めるのが常に十字団側だから、当然この手のハプニングは起こり得る。とはいえ、別の箇所(例えばミズノがバスの屋根に飛び乗るシーンとか)では非現実的な演出を採用しながら、また一方ではこうやってリアリティ溢れるハプニングを見せてくるというこの都合の良さが、画面中で進行しているドラマを極めて虚構的なものとして確立させているなぁと思う。さすがというか何と言うかw


しかしゼロ時間が出現するタイミングがあとほんの15分早ければ、シャワー真っ最中のワコが連れて来られるハメになったんだろうなぁ。ぜひ見たかった。次の機会にはぜひ。





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それでは、今回は以上です。


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