フラクタル 第３話「グラニッツの村」
牧歌的な作品だと思って油断してたらこれだよ・・・。
・本当の自由がある村？
エンリがクレインたちを追いかけ回していたのは、フラクタルシステムを管理する僧院の持ちモノであったネッサを、人質にとるためだった。ロストミレニアムなる反政府組織のグラニッツ村にやってきたことで、クレインの目の前に新たな事実が突き付けられる、激動の展開となった第３話。急速に加速してゆく物語に、期待が膨らんでくる。
まずはグラニッツ村の描写が、良くも悪くも本当に”人間的な”暮らしとして描かれていて、色々な苦労があってこそ掴める自由や幸福があるのだと、クレインの目を通して視聴者に提示されることになった。街の風景も良かったのだけど、ここは目を輝かせて大はしゃぎするクレインとネッサが、画面の中を輝しく彩っていて素晴らしい。
クレインの兄貴分気取りで、得意気になって語るスンダ。ネッサに振り回されてばかりのエンリ。生き生きと暮らす村の人々や、手作りの料理を食べたときのクレインの様子。こうしたディテールの描き方の巧さは、今回はとくに特筆すべきものがあった。ネッサを初めて見た時の、「おしゃれなべべ着てまぁ～」というお婆さんのセリフなんか、とても好きだなぁ。
その中にあって一人だけ異彩を放つ、偏屈そうな爺さん。彼は、クレインたちを「本当の自由を知らぬ」と決めつけていたが、この”本当の自由”という言葉がキーワードになるということが、前回も十分に推測させるものであったが、今回こうしてはっきりと語られることになった。
前回の記事で、フラクタルシステムによる自由は偽物であり否定するための設定であるのは間違いないとして、それに対して訴えかけられるテーマが労働やナマの生き方の賛美に留まるはずがない（そんな表面的なメッセージだけではとても納得できない）と書いたのだが、早速今回、一見正しいことをやっているように見えるグラニッツ村のやり方が、早くもその正義を揺らがせることになった。Ａという解答は間違いだが、そのアンチテーゼであるＢもまた不正解。では今作の描こうとしている解答・Ｃとは一体何か、それが今後の注目点になるだろう。
そういう意味で、Ａパートではグラニッツ村をとても素敵な場所として描いていたのは、うまいミスリードだった。あんなに人間本来の生き方を模索していた連中が、いとも簡単に殺人に手を染めることの、違和感。これを視聴者とクレインが共有できたということで、グラニッツ村が今回果たすべき役割は十分に果たされたと言って良いだろう。
・殺伐としてきた第３話
それにしても、今回の銃撃戦は異様にショッキングな光景だった。やれジブリだ何だと言われてきただけに、そしてことさら牧歌的な印象で１話２話を描いてあっただけに、こんな凄惨な光景が繰り広げられたと言うのは本当に想定外だった。
思えば、グラニッツ村の病院が描かれたシーンから、違和感はあった。村の規模は分からないが、ベッドがすべて埋まっていて、大変痛そうにしている患者もいる。単にフラクタルシステムの恩恵を捨て去った代償としてそれが描かれているのだと思ったら、実際には戦闘行為そのものが頻繁に行われている、文字通りのテロ組織だった。一方でフラクタルシステムのほうも、いままでは何となく胡散臭い存在であったのが、今回にわかに、そのグロテスクな一面をさらけ出した。こうなると逆に、心地よいＥＤが違和感があるｗ
ドッペルネッサの本体が巫女の中にいたこと、そしてフリュネが再登場したことで物語がどう動くのか、これはまったく分からないので次回を待つしかないが、フリュネやネッサが思いっきり体制側の人間であった事実も、少なからずショックだった。二人とも、フラクタルシステムのやっていることとは異なる、むしろロス・ミレの思想に近い考え方を持っているようだが、いったいどんな思惑があるのだろうか。
フリュネがフラクタルシステムをどのように認識しているのか、これを次回はぜひ聞かせて欲しいところだ。作り手が、文明の行き付いた結果としてフラクタルシステムを考案したのなら、きっと、現代の我々が今持っている願望（とくに、”自由”について）に忠実であろうとすればフラクタルシステムになってしまうぞ、という警告であると考えることはたやすい。しかし本当にそんな作品なのか、仮にそうだとしてもではそれを否定した先に何を描くのか、大いに注目だ。
またそれに関連して、自由とは何か、これについても視聴しながら考えていきたいところだ。子供が見るならいざ知らず、もうそれなりの年齢を重ねた視聴者にとっては、娯楽としてのみ優れた作品に、どれだけの価値があるといおうか。もし”真の自由”などという言葉を掲げようというのならば、我々視聴者にとって本当に価値的な思索を促すことのできる、強いメッセージを発信して欲しい。いまのところは、そうした発信に取り組むための準備をしている段階だと思われるから、これがどのような過程を経てどのような結論を導くのか、注目しておきたい。
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それでは、今回は以上です。
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・本当の自由がある村？
エンリがクレインたちを追いかけ回していたのは、フラクタルシステムを管理する僧院の持ちモノであったネッサを、人質にとるためだった。ロストミレニアムなる反政府組織のグラニッツ村にやってきたことで、クレインの目の前に新たな事実が突き付けられる、激動の展開となった第３話。急速に加速してゆく物語に、期待が膨らんでくる。
まずはグラニッツ村の描写が、良くも悪くも本当に”人間的な”暮らしとして描かれていて、色々な苦労があってこそ掴める自由や幸福があるのだと、クレインの目を通して視聴者に提示されることになった。街の風景も良かったのだけど、ここは目を輝かせて大はしゃぎするクレインとネッサが、画面の中を輝しく彩っていて素晴らしい。
クレインの兄貴分気取りで、得意気になって語るスンダ。ネッサに振り回されてばかりのエンリ。生き生きと暮らす村の人々や、手作りの料理を食べたときのクレインの様子。こうしたディテールの描き方の巧さは、今回はとくに特筆すべきものがあった。ネッサを初めて見た時の、「おしゃれなべべ着てまぁ～」というお婆さんのセリフなんか、とても好きだなぁ。
その中にあって一人だけ異彩を放つ、偏屈そうな爺さん。彼は、クレインたちを「本当の自由を知らぬ」と決めつけていたが、この”本当の自由”という言葉がキーワードになるということが、前回も十分に推測させるものであったが、今回こうしてはっきりと語られることになった。
前回の記事で、フラクタルシステムによる自由は偽物であり否定するための設定であるのは間違いないとして、それに対して訴えかけられるテーマが労働やナマの生き方の賛美に留まるはずがない（そんな表面的なメッセージだけではとても納得できない）と書いたのだが、早速今回、一見正しいことをやっているように見えるグラニッツ村のやり方が、早くもその正義を揺らがせることになった。Ａという解答は間違いだが、そのアンチテーゼであるＢもまた不正解。では今作の描こうとしている解答・Ｃとは一体何か、それが今後の注目点になるだろう。
そういう意味で、Ａパートではグラニッツ村をとても素敵な場所として描いていたのは、うまいミスリードだった。あんなに人間本来の生き方を模索していた連中が、いとも簡単に殺人に手を染めることの、違和感。これを視聴者とクレインが共有できたということで、グラニッツ村が今回果たすべき役割は十分に果たされたと言って良いだろう。
・殺伐としてきた第３話
それにしても、今回の銃撃戦は異様にショッキングな光景だった。やれジブリだ何だと言われてきただけに、そしてことさら牧歌的な印象で１話２話を描いてあっただけに、こんな凄惨な光景が繰り広げられたと言うのは本当に想定外だった。
思えば、グラニッツ村の病院が描かれたシーンから、違和感はあった。村の規模は分からないが、ベッドがすべて埋まっていて、大変痛そうにしている患者もいる。単にフラクタルシステムの恩恵を捨て去った代償としてそれが描かれているのだと思ったら、実際には戦闘行為そのものが頻繁に行われている、文字通りのテロ組織だった。一方でフラクタルシステムのほうも、いままでは何となく胡散臭い存在であったのが、今回にわかに、そのグロテスクな一面をさらけ出した。こうなると逆に、心地よいＥＤが違和感があるｗ
ドッペルネッサの本体が巫女の中にいたこと、そしてフリュネが再登場したことで物語がどう動くのか、これはまったく分からないので次回を待つしかないが、フリュネやネッサが思いっきり体制側の人間であった事実も、少なからずショックだった。二人とも、フラクタルシステムのやっていることとは異なる、むしろロス・ミレの思想に近い考え方を持っているようだが、いったいどんな思惑があるのだろうか。
フリュネがフラクタルシステムをどのように認識しているのか、これを次回はぜひ聞かせて欲しいところだ。作り手が、文明の行き付いた結果としてフラクタルシステムを考案したのなら、きっと、現代の我々が今持っている願望（とくに、”自由”について）に忠実であろうとすればフラクタルシステムになってしまうぞ、という警告であると考えることはたやすい。しかし本当にそんな作品なのか、仮にそうだとしてもではそれを否定した先に何を描くのか、大いに注目だ。
またそれに関連して、自由とは何か、これについても視聴しながら考えていきたいところだ。子供が見るならいざ知らず、もうそれなりの年齢を重ねた視聴者にとっては、娯楽としてのみ優れた作品に、どれだけの価値があるといおうか。もし”真の自由”などという言葉を掲げようというのならば、我々視聴者にとって本当に価値的な思索を促すことのできる、強いメッセージを発信して欲しい。いまのところは、そうした発信に取り組むための準備をしている段階だと思われるから、これがどのような過程を経てどのような結論を導くのか、注目しておきたい。
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この記事へのコメント
トラックバック送らせて頂きました。
よろしくお願いします。
どうもありがとうございます。記事拝見させていただきましたが、自分の無知・不得手な領域についての言及がたくさんあって、とても面白かったです。
今後ともどうぞよろしくお願いします。