氷菓 第3話「事情ある古典部の末裔」

嫌煙家なら大憤怒のエピソード、だったよね?



千反田えるの、一世一代の告白シーンから、第3話は幕を開く。奉太郎の不安と怖れとちょっぴりの期待が入り混じった夢心地の喫茶店描写と、告白の中身が単なる頼みごとであることを知った時の彼の表情が最高に面白かった。振り子時計のハートマークのように分かりやすいメッセージを配しつつ、困惑しながら二度も「えっ?」と呟いてしまう奉太郎の心情変化を微妙な間の置き方によって表現し、彼の言う「薔薇色の生活」の構成要素の一端を手に取るように披露してくれている。今回は結局のところ、世間的な意味での薔薇色が意味する恋愛沙汰に発展することはなかったけれど、奉太郎の言う薔薇色というのはもっと意味が広くて、心身両面でのエネルギー消費を強いられる活動はもちろん、それらの”色のついた”生活を希求してしまう自分自身の心のありようまで含めて、面倒くさいものと断定して忌避しているわけだ。まぁいずれにせよ千反田えるが存在している限り、彼の望むモノクロの生活には二度と戻れそうにない。


3話目にして千反田の「一身上の都合」が明らかになったわけだが、彼女の表情を見る限りでは、話の内容自体から想像されるよりよほど深刻な問題のようだ。千反田は彼女の親族が一度きりみせた意外な一面が気にかかり、おそらくは大好きな叔父を不機嫌にさせてしまった自分の不用意な発言を後悔するようなカタチで、いまだに引きずっているらしい。これを傍から聞いている限りでは、そこまで思いつめるような話ではないし、奉太郎がつい人海戦術を勧めてみたくなったのもよく分かる、ごくありふれた問題だ。だから、千反田が行方不明の叔父にどんな想いを抱いているのか、直接語られないうちは、どうしてここまで思いつめているのかは理解しづらいだろう。もしかしたら彼女は叔父に初恋に似た感情を抱いているのではないかとさえ考えたくなるところだが、それが正しいか否かは別にしても、それくらい重大なことだと認識しておくことで、彼女の深刻さを少しでも理解し同情することにつながるかもしれない。奉太郎が、自分は責任を取れないと釘をさすように言っていたのは、そこまで重大なこととしてこの問題を受け止めているし、そうしなければならないということを、千反田に、そして自分自身に言い聞かせていたのではないだろうか。


Aパートの深刻さを受けて、Bパートラストで再び関谷なる人物の姿に接近していった場面では、まるでサスペンスドラマのようなスリリングな描写が行われていた。半世紀も続く部活動の成果が完全なカタチで残っていることなんて奇跡と言って良く、創刊号が見当たらなくなってしまっているのも別段怪しむべきこととは思えないのだが、それにしては摩耶花の騒ぎ方が大げさで、ひどく驚かされる。叔父の人物像に強いミステリーを感じさせられていた視聴者なら、叔父がもっとも深くかかわっていたはずの創刊号「だけ」が存在しないことは異常な事態であり、千反田の動揺も手伝って強いショックを受ける場面ではあるのだが、千反田の事情を知らないはずの摩耶花までショッキングな演技をしていたのは、アニメ流の嘘である。多分に千反田や奉太郎の心理状況に影響されている場面と言えようし、リアルに見える画面世界が容易にキャラクターの空想的心情にリンクしてくるのは今作の特徴のひとつだ。


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千反田えるの叔父の問題に挟み込まれる格好で、今回は最初の中間テストと、古典部の文集バックナンバー捜索のエピソードが挟み込まれる。


「高校生活と言えども、決して薔薇色だけではない」という奉太郎のナレーション。おまえふざけんなよ、おれの高校生活に薔薇色なんてひとつも無かったぞ! ・・・と言いたい視聴者は多いのではないだろうかw まぁ男女共学で、部員の半分が異性で、嫌々言いながらも積極的におしゃべりやスキンシップに励んでいる奉太郎の高校生活は、なるほど薔薇色に満ち満ちていると言っていいのだろう。


そして試験終了と同時に気分は文化祭モードへ。古典部としては、絶好のタイミングで明らかになった文集のありかを辿って、古典部らしい活動に邁進しようというところだ。そこで今回の推理シーン。ターゲットは、以前の部室にあるという金庫、そしてそれを隠そうとする壁新聞部との対決だ。


結論から言えば、新聞部の部長さんでは名探偵 折木奉太郎の相手にならず、あの量の文集をわずか5分間の間に、労せずして現部室まで運搬させることに成功。今回ばかりは、奉太郎の省エネ主義が相手の悪事に対する懲罰としてカチリと機能した。主人公がひねくれものだと、こういう展開は本当に面白く、また胸のすく思いがするものだ。


それにしても壁新聞部の部長さん、あいつはあそこまで苦労して、なんで煙草を吸いたがるのか。せめて家帰ってからにしなさいと言いたくなる。赤外線センサーはさすがにやりすぎとしても、あれだけのリスクや苦労を背負ってでも学校で煙草を吸おうとする馬鹿が現実にもたくさんいるから頭が痛い。学校だけではない。未成年だからという話でもない。喫煙に際しての道徳観が一向に形成されないのが、たまらなく腹が立つ。マナーさえ守ってくれればいくらでも煙草を吸えばいい、でもなんでトイレで吸ったり、吸い殻を投げ捨てたりするの? なんで灰皿に他のゴミまで入れていくの? なんで吸い殻のギッチギチに詰まった空き缶やペットボトルを、アルミ缶専用のリサイクルボックスに捨てていくの? こないだも車から火のついたままの吸い殻をポイ捨てしやがった奴を見かけたよ? 頭 お か し い だ ろ っ ! 


・・・いやこの部長さんがそこまでしてるとは限らないけどさw でもこーゆー人たちはきっと将来、傍若無人な最低マナーの喫煙者に育っていくんだよ。奉太郎は変な気を使わず、さっさと職員室に行って先生呼んで来ればよかったんだ。ちょっとした名家らしいけど、千反田の名前を聞いて焦ってるような小物なら、親を通じて古典部メンバーの家庭に圧力かけるとかそんな事態にはならなかっただろうし。こんなのがあと何年もすれば教職者になって子どもたちを指導する立場につくとか想像すると、ぞっとする。思わぬところで嫌~な社会の暗部を見せられたなぁ。




今回の一件は、自分の大嫌いな煙草に関することで過剰反応してしまったけれど、もしかしたら今後、とくに千反田えるの叔父に関するエピソードのなかで、社会や人間関係の暗部に踏み込んでどきっとさせる描写を繰り広げることがあるかもしれない。ラノベ的ファンタジーに包まれたほのぼのとした作品だと思い込んでしまうと、予想外の落とし穴にはまりこんでしまうかもしれない。前述したように今回はにわかにサスペンス色が強まってきたので、今後の展開には少し心して臨んでおいた方がいいのかもしれない。


次回は、サブタイトルから察するに、創刊号を探すエピソードになるのだろうか? 目の前の文化祭に向けて彼らがどんな文集を作るのかも興味があるので、そちらのほうも楽しみにしておきたい。



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それでは、今回は以上です。


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この記事へのコメント

あるるかん
2012年05月08日 11:55
私はてっきりあそこは、橘さん風に言えばお宝本の宝物庫になっていたのかと思いました(笑)。だとしたらまだ可愛いほうですよね。女子が宝物庫にやって来たらそりゃ焦りますからねぇ(笑)。


しかしキャストがつくづくCLANNADですね(笑)。どうせなら井上喜久子さん、中原麻衣さん、広橋涼さん、桑島法子さんも出てくれないかなぁ。


そういえば今期で置鮎さんがまともに喋っているのを初めて聴きましたよ。
最近じゃ置鮎さんはとち狂って雄叫びあげたり、F-15Jをパクって空中戦をしたりしてましたからね(笑)。
おパゲーヌス
2012年05月08日 19:20
>あるるかんさん
自分も最初はお宝本かと思いました。そしてなんか女の子勢に対する愛想の良さ(一方で奉太郎は邪見にする切り替えの早さ)から言って、もしかしたら本ではなくもっとイイコトしてるのかと期待しましたが、その期待が裏切られたのでこの喫煙小僧に対する憎しみは3倍増しになりましたw

キャストがCLANNADかぁー。うーん、ヒロイン勢が違うからあんまりダブらないかなぁ、自分はw ていうかCLANNADは最後まで見てないのであまり馴染みが無い(汗

むしろ壁新聞部の部長が出てきたときはどこの古泉かと思いましたね。

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