氷菓 第16話「最後の標的」
奉太郎がエンジンかかってまいりました。
文化祭エピソードはまだまだ続く。今回は奉太郎が本格的に、十文字事件への推理を巡らせる話。唐突に折木姉が登場したが、摩耶花のくれた手鏡と引き換えに、摩耶花の探していた同人誌を置いていくあたり、このお姉さんの本作品中におけるトリックスター的な立ち位置がよく窺える。できれば一日早く持ってきて欲しかったところではあるけれどw
そしてこの同人誌『夕べには骸に』が、奉太郎に重要なインスピレーションを与える。漫画の内容を素直に絶賛していたり、この本を千反田と取り合う場面など、奉太郎がまだまだ余裕たっぷりに日常の幸福を堪能している様子が見られるけれども、今回ばかりはこの余裕が頼もしく、下手に意気込むことなく冷静に推理を働かせている。それに、どうやら奉太郎自身が、この事件の謎を解き明かすことに興味や楽しさを見出しているようだ。これはわれらが名探偵どのにとって非常に大きな一歩。まぁここ数日は十分に時間と体力を無駄にしてきたのだから、充填したエネルギーのはけ口にこの事件はちょうど良かったのかもしれない。
同人誌のあとがきに書かれてあった「次回作」の予告と、現在進行中の十文字事件に何か接点があるのではないか、という奉太郎の推測は、今のところ当てずっぽうの域を出ない。両者は、ただちょっとやり口が似ているように見える、というくらいの曖昧な関連性しかなく、インスピレーションの材料とはなったが、決定的な切り札になるとは、まだちょっと信じがたい段階だ。奉太郎以外の人間が同じことを言っても、誰も取り合ってはくれなかっただろう。けれど多面体としての姿を持つ真相・真実の全体像を把握するためには、思ってもみなかった方向に視点を移すというのは極めて有効なこと。今回、里志と二人きりで奉太郎が自分の考えを述べた場面では、まずはその視点を移動させて考えてみるべきことを表明した。この新たな着眼点からさらにどうやって切り込んでいくのか、次回の奉太郎の推理の行方がじつに楽しみだ。
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奉太郎の考えを聞かされた里志にしてみれば、この友人がどのようにして無関係なふたつの事象を、眼前の謎を解き明かす鍵として活用しようと思い至るのか、ちょっと信じられない思いだっただろう。ある意味では正攻法とも言える手法を、ほかの雑多な自称探偵たちに混ざって進めてきた里志は、部室から一歩も出なかった奉太郎がこうも簡単に糸口を見つけ出してしまうことに、悔しさ以上に、自分の才能に対する失望を感じずにはいられなかったようだ。
つい一日前まで全力で文化祭を楽しんでいたのが嘘のように、里志の表情や言動からは余裕がなくなっている。奉太郎が里志の変化にどこまで気付いているかは不明だが、事件解決後の二人の友情が気になってくるところ。他者の才能や幸運に対する男の嫉妬の辛さというものは痛いほど分かるだけに、里志のことが心配だ。こればっかりはプライドの問題でもあるので、いくら慰めたり励ましたりしても無駄に終わることが多く、またそれは一生抱え続ける心の傷になりかねない。せめて、奉太郎を出し抜くカタチで事件解決への重要な局面を自分自身で担うことができたなら、里志にとってのせめてもの慰めになるとは思うのだけれど。
個人的な願いとしては、できれば「名探偵・折木奉太郎」というキャラクターは、奉太郎と里志の共同戦線として、どちらかが欠けても不完全な、お互いに認め合い協力し合う名コンビとしての探偵像であって欲しい。そのためには里志が、データベースやアドバイザーとしての役割を誇りを持って担当してもらうのが一番良いわけで、今回の一件が二人にとっての理想形を模索する舞台であって欲しいのだが、はたしてどうなるだろうか。
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あと少し辛辣なことを言わせてもらうと、文化祭に突入してからの千反田さんの空気っぷりがどうしようもないところまで来ている気がするw この人はその前のエピソードでも酔っぱらってぶっ倒れてただけだったからなぁ。主人公のやる気を無理やり奮い立たせる起爆剤としての役割が、ここしばらくは希薄になっているように感じる。
奉太郎が自発的に(そして楽しみながら)探偵役を引き受けることになったら、それは千反田をはじめ古典部にとっては幸せなことかもしれないけれど、ヒロインとしてはどーなのかと言わざるを得ないわけでw 萌え担当として素晴らしいのは大歓迎だけど、奉太郎と里志の関係が何らかの進展を見せそうな今、ヒロインの存在意義も同時に見直しが行われているのかもしれない。
・・・摩耶花が、なんとなく奉太郎のことを(恋愛的な意味で)気にしてるように見えるんだけど、気のせいかな? もしそんなことになったらラブコメとしては盛り上がりそうだけど、そこに千反田が割り込む展開が想像できない。恋愛要素は当分、期待できないかな。っていうか今のままだと、奉太郎と里志でカップリング成立するなぁw それはそれでアリですが。二人とも可愛いし。
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それでは、今回は以上です。
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文化祭エピソードはまだまだ続く。今回は奉太郎が本格的に、十文字事件への推理を巡らせる話。唐突に折木姉が登場したが、摩耶花のくれた手鏡と引き換えに、摩耶花の探していた同人誌を置いていくあたり、このお姉さんの本作品中におけるトリックスター的な立ち位置がよく窺える。できれば一日早く持ってきて欲しかったところではあるけれどw
そしてこの同人誌『夕べには骸に』が、奉太郎に重要なインスピレーションを与える。漫画の内容を素直に絶賛していたり、この本を千反田と取り合う場面など、奉太郎がまだまだ余裕たっぷりに日常の幸福を堪能している様子が見られるけれども、今回ばかりはこの余裕が頼もしく、下手に意気込むことなく冷静に推理を働かせている。それに、どうやら奉太郎自身が、この事件の謎を解き明かすことに興味や楽しさを見出しているようだ。これはわれらが名探偵どのにとって非常に大きな一歩。まぁここ数日は十分に時間と体力を無駄にしてきたのだから、充填したエネルギーのはけ口にこの事件はちょうど良かったのかもしれない。
同人誌のあとがきに書かれてあった「次回作」の予告と、現在進行中の十文字事件に何か接点があるのではないか、という奉太郎の推測は、今のところ当てずっぽうの域を出ない。両者は、ただちょっとやり口が似ているように見える、というくらいの曖昧な関連性しかなく、インスピレーションの材料とはなったが、決定的な切り札になるとは、まだちょっと信じがたい段階だ。奉太郎以外の人間が同じことを言っても、誰も取り合ってはくれなかっただろう。けれど多面体としての姿を持つ真相・真実の全体像を把握するためには、思ってもみなかった方向に視点を移すというのは極めて有効なこと。今回、里志と二人きりで奉太郎が自分の考えを述べた場面では、まずはその視点を移動させて考えてみるべきことを表明した。この新たな着眼点からさらにどうやって切り込んでいくのか、次回の奉太郎の推理の行方がじつに楽しみだ。
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奉太郎の考えを聞かされた里志にしてみれば、この友人がどのようにして無関係なふたつの事象を、眼前の謎を解き明かす鍵として活用しようと思い至るのか、ちょっと信じられない思いだっただろう。ある意味では正攻法とも言える手法を、ほかの雑多な自称探偵たちに混ざって進めてきた里志は、部室から一歩も出なかった奉太郎がこうも簡単に糸口を見つけ出してしまうことに、悔しさ以上に、自分の才能に対する失望を感じずにはいられなかったようだ。
つい一日前まで全力で文化祭を楽しんでいたのが嘘のように、里志の表情や言動からは余裕がなくなっている。奉太郎が里志の変化にどこまで気付いているかは不明だが、事件解決後の二人の友情が気になってくるところ。他者の才能や幸運に対する男の嫉妬の辛さというものは痛いほど分かるだけに、里志のことが心配だ。こればっかりはプライドの問題でもあるので、いくら慰めたり励ましたりしても無駄に終わることが多く、またそれは一生抱え続ける心の傷になりかねない。せめて、奉太郎を出し抜くカタチで事件解決への重要な局面を自分自身で担うことができたなら、里志にとってのせめてもの慰めになるとは思うのだけれど。
個人的な願いとしては、できれば「名探偵・折木奉太郎」というキャラクターは、奉太郎と里志の共同戦線として、どちらかが欠けても不完全な、お互いに認め合い協力し合う名コンビとしての探偵像であって欲しい。そのためには里志が、データベースやアドバイザーとしての役割を誇りを持って担当してもらうのが一番良いわけで、今回の一件が二人にとっての理想形を模索する舞台であって欲しいのだが、はたしてどうなるだろうか。
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あと少し辛辣なことを言わせてもらうと、文化祭に突入してからの千反田さんの空気っぷりがどうしようもないところまで来ている気がするw この人はその前のエピソードでも酔っぱらってぶっ倒れてただけだったからなぁ。主人公のやる気を無理やり奮い立たせる起爆剤としての役割が、ここしばらくは希薄になっているように感じる。
奉太郎が自発的に(そして楽しみながら)探偵役を引き受けることになったら、それは千反田をはじめ古典部にとっては幸せなことかもしれないけれど、ヒロインとしてはどーなのかと言わざるを得ないわけでw 萌え担当として素晴らしいのは大歓迎だけど、奉太郎と里志の関係が何らかの進展を見せそうな今、ヒロインの存在意義も同時に見直しが行われているのかもしれない。
・・・摩耶花が、なんとなく奉太郎のことを(恋愛的な意味で)気にしてるように見えるんだけど、気のせいかな? もしそんなことになったらラブコメとしては盛り上がりそうだけど、そこに千反田が割り込む展開が想像できない。恋愛要素は当分、期待できないかな。っていうか今のままだと、奉太郎と里志でカップリング成立するなぁw それはそれでアリですが。二人とも可愛いし。
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この記事へのコメント
短い出番でしたか、僅かな情報から事件をある程度把握して、可愛い弟にヒントとなる品を託すなど、少ない出番で、あの入須を愛する弟の成長のための駒に利用してみせた実力の片鱗が垣間見えましたね!
里志は前作でも「自分は一番にはなれない」などと、おどけて自嘲してましたが、彼もまだまだ青二才なんですよ。自分の弱さや欠点を笑い飛ばしたり、受け入れることはまだできません。前作のおどけた態度は強がりで、今回見せた、奉太郎への焦燥・羨望・嫉妬・諦観が彼の本心を表してましたね。この部分は原作でも『クドリャフカの順番』で初めて明かされました。
里志が「安心院鐸波」というペンネームを、三文字の名字とは安直だとか言って、えるがショックを受けて慌てて里志が安直だと言ったのは下の名前のほうだと取り繕ったら、奉太郎に気づき奉太郎は別だと言ったら、伊原摩耶花が不機嫌になり里志がさらに墓穴を掘ったエピソードが抜けていたのは残念です。
『氷菓』のドラマCDのジャケットを見ましたが、古典部・入須・十文字・遠垣内がみんなで阿呆なポーズをしていたのが笑えました(笑)。入須がどんな弱味を握られたらあんな、恥ずかしくて阿呆なポーズをするのか、私、気になります!!
奉太郎と摩耶花のカップリングはできないと思いますよ。摩耶花は数年に渡り里志を慕っていて、里志も奉太郎もそれを承知していて、里志も有り体に言って摩耶花に(友情的な意味ではなく)好意を持っているが、彼個人の問題で答えられていない状況なんで、まぁ無理でしょうね。
個人的には奉太郎とのカップリングはえるか入須ではどうかでしょう?
奉太郎×摩耶花は、原作未読者の勝手な妄想と思ってください。画面の端々から、もしかしたらそういう妄想もアリじゃないかと思ってみたまでですので。
しかし一方で、千反田が奉太郎の恋人になる日もまた、永遠にやってこないようなイメージではありますw 奉太郎の片思いに終わりそう(それも、かなり惨めな部類の)。10年後くらいには彼女が平気な顔して唐突に、見知らぬ誰かとの結婚を報告してくるような予感がします。入須先輩は・・・なぜかあの人は同性愛者であってほしい願望がw
里志の青二才臭さは、文化祭エピソードに入ってからにわかに表れてきた部分ですね。それ以前のエピでは、いろんなことに興味を抱きつつも本当に情熱を傾けるものが無いんじゃないかと想像していましたが、叙述トリックに関する議論でホームズへの入れ込みようを見せられて、やっと里志の人物像が地に足をつけたように感じました。彼もここでようやく、この物語における主人公の一員になれたのではないかと。これからの里志の活躍?が楽しみです。