新世界より 第2話「消えゆく子ら」

消えるのは、できそこないの子だけじゃなかった。



設定解説的なセリフも増えてきて、次第に今作の世界観が伝わってきた第2話。ハンコ1個で子供が消滅してしまうのも怖いけれど、人間を神とあがめるバケネズミなる生き物が登場したのも、なかなかにショッキングだった。




今回もまだまだ全人学級での生活を描くエピソード。前回と今回のたった2話分の中でも、すでに幾度も、子供たちの呪力を訓練するためのカリキュラムが手を変え品を変え行われてきたが、今回の搬球トーナメントもそのひとつ。白熱しやすい正面きってのチーム対抗戦であること、両者の呪力がバッティングしかねないギリギリの状況を演出できること、審判の裁定に大きく頼る曖昧なルールになっていること、等の条件を盛り込んだゲームとなっており、この学校の歪さを印象付けるために用意された舞台であったといっていい。


試合の内容はともかくとして、このゲームの注目点は、フェアでないプレーが行われた際にどういった処置がとられるかという点だった。呪力というのは目に見えるものではなく、また子供たちにとっては十分に使いこなすことのできない不安定な技術でもあるので、いくらルールで禁止されていることだとしても、バレずに済んだり偶然で済まされたりすれば、ズルをしても切り抜けられる可能性が高い。そしてまさにそんなズルが行われたわけだが、状況証拠から言って限りなく黒に近いルール違反に対して、その場では何のお咎めも無しということになった。


ここで違和感を覚えるのはなによりも先生の態度だろう。我々は主人公側視点で見ているから余計そう感じてしまうが、それにしたって審判役の先生の判断は公平性に欠けるものに見えた。ひょっとしてズルをした少年は村の実力者の息子か何かなのかと思っていたが、しかし即座に名簿から消されてしまったのを見れば、先生がわざと2班に有利な判定をしようとしたわけではなさそうだ。


ここから分かるのは、たとえ呪力を使い慣れた大人であってさえ、どの子がどんなふうに呪力を行使したのかを見抜くことは不可能であるという事実と、また学校生活の中にほんのわずかな波乱すらも発生するのを忌避する傾向にある、ということだ。本編冒頭で読まれていた「業魔」の説話にもあったように、この世界では決まりきった規定や慣習を打ち破ろうとする者を排除しようとする。しかし事なかれ主義の極致ともいうべき社会は、あぶれものをその場で糾弾することすらしない。ただそうしたあぶれものの存在を抹消し、忘れ、無かったことにしてしまう。彼らの日常はほんのわずかな揺らぎさえ発生してはいないのだし、今後もそんな事態は起こらないのだと、自分自身に言い聞かせていくのである。




このような徹底した事なかれ主義は、人間が神とも呼ばれあがめられていることと無関係ではないだろう。原始的な宗教観において、特定の個人が神(あるいはその代理としての王)とあがめられる場合、彼に求められているのは何よりも安定性であるという。神はこの世界そのものであり、もし神の身に何か異変があれば、それは即、世界の異変につながる。神になった人物は無数のタブーによって守られることになるが、そのタブーは神に対する尊敬ゆえではなく、神の身にわずかな異変でも起こるのを恐れるためである。逆に言えば、神となった人物は、この世界に安定をもたらす使命を背負っているがゆえに、神聖な場所として区切られた狭い空間から出ることなく、ただその場に「いる」ということだけを求められるのだ。


今回、本編がはじまる前に、現代からは500年後とされる社会が映し出された。そこでナントカ皇帝と自称する男は、恐らく彼のみ(あるいは近親のごく一部の人間)だけに使える呪力を用いて、まるで神にでもなったかのような振る舞いを行っていた。この時代からさらに500年を経た時代の人間たちは、ひょっとしたら以前の皇帝の末裔かそれに準ずる者たちであり、自分たちのアイデンティティに「呪力が使えること」を据え、神に連なる存在としての振る舞いを自らに課しているのだとすれば、彼らが自分たちの社会を極度に硬直化させ、決してほころびが表れないように腐心しているのもうなずける。早季の父親は、バケネズミが人間を勝手に神とあがめているような口ぶりで話していたが、それでいて彼ら自身、神様としての存在意義を受け入れ、進んでそれを演じようとしているようにも見える。今作のキャッチコピーに「偽りの神に抗え。」とあるが、主人公たちが偽りの神に支配されているだけでなく、むしろ彼ら自身が偽りの神に仕立て上げられているという状況が、なんとなく見え隠れしているように思う。


ところで今回は、早季が図らずも「神の恩寵」をバケネズミに施してしまったが、これがいったいどんな展開につながってくるのか、期待よりは不安でいっぱいになってくる。これが他の作品だったら、助けたネズミが忘れたころにやってきて早季のピンチを助けてくれる、バケネズミの恩返し的な展開を予想したくなるところだ。しかし今作の場合は、可哀そうなネズミを一匹救ってあげたという善行よりも、子供の分限を逸脱した行為に手を染めてしまった罪のほうがずっと気がかりだ。それだけ、早季たちはこの社会ではまだ何の力も持たない弱き存在として描かれている。親の愛情によって守られる存在ではなく、大人の都合によって躾けられ、切り捨てられる儚い存在として・・・。


ともあれ、いままでの違和感などすべて吹き飛ばしてしまうような重大事件がこれから発生するようだから、まずは次回の川登りキャンプのエピソードに集中しよう。次回予告ではまた奇怪な生物(?)が登場していたが、これまで感じてきたこの世界へのおぞましさも、まだまだ序の口だったというのだろうか。ナレーションにて秋月真理亜に関する恐ろしげなコメントが語られていたが、その一端を早くも見ることができるのか? 次週の展開を楽しみにしたい。



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それでは、今回は以上です。


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