君に届け 2ND SEASON 第8話「届け」

届け!




・あきらめるって、何をだ?


言葉も、行動も、気持ちも、すべてがチグハグにすれ違っていた爽子と風早。そこには二人の自意識の差異があり、相手の気持ちの誤認識があり、外野の余計な手出しもあっての、不運なすれ違いであった。しかし、爽子が自分自身の気持ちに真正面から向き合って見せたことで、わざわざ横道にそれて苦労した様々な出来事までがすべてプラスに働いているかのように、カチっと歯車が噛み合って、怒涛のクライマックスへと突入した。このテレビシリーズにおける最重要回は恐らく次回のエピソードになろうとは思うが、気分の高揚感、偶然と必然の重なり合う数奇な運命の交錯、そうしたドラマを描き上げる構成の見事さ等々、見ごたえという意味では今回がクライマックスと言っても、良いのではないだろうか。


あきらめちまえよ、という言葉が、前回と今回を中心に、爽子と風早の双方に幾度も語りかけられてきた。それは主にピンと三浦健人の口から出たセリフであったが、しかし思い返してみれば、「あきらめる」というのはもともとは爽子の代名詞的行為であった。友人たちの輪の中に入ることを諦める、他者の誤解を解くことを諦める、好きな男の子と自分が肩を並べることも諦める。それは、口下手な爽子が自己を守るために、自然に身に付けてしまった精神的鈍感さだ。爽子の心の周りに城壁のように立ちふさがっている諦めの防衛本能を、しかし恋の翼が軽々と飛び越え、ようやく爽子を城の外に連れ出すことに成功した。今回のエピソードはそんな物語であったと言えようか。


いや、それは誤りだ。恋が爽子を大胆にしたか? むしろ爽子は、恋を自覚すればするほど、より堅固に自身の胸のうちを防衛するべく、粘土を捏ね上げて壁を高く厚くしていったのだった。そこに坑道を穿ったのは、風早の笑顔ではない。矢野とちづの友情が、くるみちゃんの激情が、龍の支えが、そして風早たちの献身によってできたたくさんの友人の信頼が、まる1年もの時間をかけて、やっと爽子を救い出す抜け道を、その厚い城壁にぶち抜いたのだ。


では、初恋が爽子に教えてくれたこととは何であったか。それは、仮に何かを”する”ことは諦めることができても、誰かを好きで”いる”ことについては、諦める算段なんかひとつも立ちはしない、ということだ。風早にチョコを渡すことを、彼女は諦めた。けれど、風早を好きでいることは、どうしたって諦められなかった。爽子自身が気付いていなかったそんな大切なことを、やはり矢野&ちづやくるみちゃんの言葉をもらい、また爽子が自問自答を繰り広げることで、やっと気付くことができたのだった。




思えばこの『君に届け』という作品は、誰かを好きで”いる”ことのピュアな感情を、徹底して描き続けてきた作品であったと言える。好きでいることなんか諦められないと言うような言動を今回取ったのは風早だったけれど、ちづも、龍も、くるみちゃんも、ほとんど片思い(一人はすでにフラれている)なのに、彼らは絶対に自分の恋を諦めようとしない。また矢野とちづの爽子への友情も、恋と同じように一途でピュアな想いである。今作中ではしばしば、ピュアなのは爽子で、たとえ風早でさえもその内面には決して純粋とは言い切れない負の感情を抱えている様子が描かれているけれども、最初から聖人君子な爽子でなくとも、たった一人の人を一途に心の底から想い続ける無償の愛によって誰もが本当に純粋で美しい内面を宿すことができることを、何度も繰り返し描いてきた作品であった。そして、本来はエゴイストであった人々が献身的友愛によってピュアな心を獲得したのとは逆に、無垢な爽子が自分のエゴに素直になることで、やはり純粋な愛にひた走ることができるようになったという、この対比もとても興味深い。


利己主義も利他主義も、突き詰めた先にはいびつな人生観が横たわっているだけである。人の心はそんな単純なものではない。どんなエゴイストだって誰かのために真剣になれるし、どんな博愛主義者だって特定の人物を贔屓目に見てしまうものだ。清濁の二元論では絶対に説明のつけられない不可思議な人間の存在、それがもっとも生々しくあらわになるのが、恋愛の場であると言えよう。


今作がこんなにも感動を呼び起こすのは、マンガやアニメを用いて、画面の中にホンモノの感情を持った人間たちの恋を、描いているからだ。優れた人間観察力と描写力、それらを支える豊かな想像力が見て取れる『君に届け』の舞台。そしてその根底には、徹底した人間賛美の精神が横たわっているのではないだろうか。




・ちづの誕生日会


なんか知らない間に誕生日を迎えていたちづ。学園祭直前で、皆がお祭り気分で盛り上がっているからこそ、教室で派手にお誕生日会なんてやったのだろうな。ひょっとして、原作ではセリフ付きでガッツリと描かれた一本のエピソードだったのではないのかしら? 仮にそうなら、今回はあくまで爽子の恋にスポットを当て、ちづ絡みのエピソードはまるまる端折ってしまったことになるのかもしれない。OPテーマの爽やかで親近感の湧く楽曲と、様々な思いを抱えるキャラクターたちをあえてセリフ抜きで描いたのは感慨深い演出ではあったが、それにしては無言劇にドラマがありすぎて、セリフ削られたのならもったいないなぁとどうしても思ってしまう。DVDで補完とか、ないのかな。


それにしても、1期の当時、ちづが龍に誕生日プレゼントを渡そうとヤキモキしていたエピソードがあったけれど、それに比べて龍はスマートに渡しすぎでかっこよかったw プレゼントのセンスも良かったし、龍はあんなんですごく気が利く。そろそろ龍の気持ちもちづに届いて欲しい頃合だが、まだまだ難しいだろうなぁ。


爽子のおみくじに書いてあった、「愛を捧げよ」という言葉。もしかしたら爽子だけでなく、多くの(恋愛に限らない)人間関係って、このたった一事ですべて事足りてしまうのではないかと、思ってしまう。それはともかく、”愛を捧げよ”と言われて、”君に届け”と願うことになった爽子が、次に迎える展開やキーワードは何になるのか。また、風早はヘタレの汚名を完済することができるのか。次週エピソードを心待ちにしたい。




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それでは、今回は以上です。


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